写真の人
お堂にはいろんな人の写真があります。
誰かが持ってきて貼っていきます。
いつの間にかそんな写真でお堂の前は一杯になっています。
おじいさんやおばあさんの写真もあります。
お父さんやお母さんの写真もあります。
お兄さんやお姉さんの写真もあります。
弟や妹の写真もあります。
赤ちゃんの写真もあります。
黄色くなった紙の中に、人の形がぼんやり見えているだけの写真もたくさんあります。
破れてしまったものはもっとたくさんあります。
新しい写真が貼られると、そのうちに古くなった写真がはがれて風に飛ばされていきます。
風に飛ばされた写真は雨に打たれて粉々になってしまいます。
映っていた人はどこに行ってしまったのかと思います。
貼った人は誰だったのかなと思います。
その写真を撮った時は楽しい時だったのだと思います。
でも悲しいからお堂に貼ったのでしょう。
写真は大好きな人が映っていたのでしょう。
お堂に写真を貼れば悲しくなくなるのでしょうか。
たくさんたくさん貼れば悲しくなくなるのでしょうか。
また写真を貼っている人を見ました。
写真を貼っている人は悲しい人です。
大好きな人の写真を貼っている人は悲しい人です。
お大師さま、この人が貼った写真をきっと見てくださいね。
お大師さまに見て欲しいから、一番楽しい時の写真を貼ったのです。