チベットに伝わる十一面観音のお話
ある時、観音菩薩は阿弥陀如来に対して誓いをたてます。
この世の生きとし生けるものをすべての苦しみから救います。
もしも、この誓いが揺らぐようなことがあれば、自分の頭が粉々になっても良いと。
そう阿弥陀如来さまに誓って精進します。
ところがある時、自分の目が届いていないところで、さらに多くの者たちが不幸に苦しんでいることを知り、観音菩薩は深く驚き悲しみます。
その胸中に一抹の不安がわくや、彼の頭は粉々に砕け散ってしまいました。
これを見ていた阿弥陀如来さまは、観音さまを憐れみ、もう一度生きとし生けるものの多ために精進する機会を与えるため、その砕けた頭をつなぎ合わせ十一の顔を持つ十一面観音菩薩に生まれ変わらせました。
これは、チベットに伝わるお話としてチベット仏画(タンカ)の絵師である馬場崎研二さんがご著書の『異境』の中で紹介されているものです。
長谷寺のご本尊である十一面観音さま。
どうして十一のお顔を持つようになったのかを伝えるお話です。
生きとし生けるものを救いたいという観音菩薩の大きな誓い。
その誓いのありがたさをあらためて感じるお話ですね。