和讃とは、仏さまやその教え、また各地の霊場のありがたいご利益を、親しみやすく、唱えやすい調べによって作られたものです。
奈良県の長谷寺に伝えられる「日本国長谷寺観世音縁起和讃」は、奈良の長谷観音の縁起を伝える江戸時代からの和讃ですが、この中の一節に、当山のことが詠われています。
ご紹介しますので、ぜひお読みください。
奈良長谷寺所伝「大日本國長谷寺觀世音縁起和讃」より
舒明天皇の御宇(ぎょう)とかや
信濃国の更科に
白介翁(しらすけおきな)といへるあり
二親(にしん)の菩提を善光寺
阿彌陀如来に祈りしに
大和国(やまとのくに)の長谷寺は
諸佛集會の霊地なり
かしこに行て持念せば
汝が所願滿つべしと
如来の告(つげ)を蒙りて
はるばる尋ね来て見れど
更に佛もましまさず
住人もなき山中に
光を放つ處あり
其所にて念誦怠らず
一夜(あるよ)の夢に生身(しょうしん)の
十一面観世音
感見してより不可思議の
利益に預り富榮へ
五萬長者と世に呼れ
彼の観音を造立し
新長谷寺と號けけり
翁の願力彌陀如来
観音薩埵の擁護にや
千年(ちとせ)の後の今に尚
霊験あらたにおはします
以上です。
奈良長谷寺は、真言宗豊山派の総本山であるとともに、奈良時代の昔から、人々の信仰を集めてきた名刹中の名刹、霊場の中の霊場です。
その名刹と信州長谷観音の深いゆかりを伝える和讃。
今は知る人も、唱える人もいなくなってしまったこの和讃ですが、和讃には、観音様に寄せた先人たちの信心が込められていますので、大切に伝えていきたいですね。