薔薇二曲
一
薔薇ノ木ニ
薔薇ノ花咲ク。
ナニゴトノ不思議ナケレド。
二
薔薇ノ花。
ナニゴトノ不思議ナケレド。
照リ極マレバ木ヨリコボルル。
光リコボルル。
北原白秋 『白金之独楽』より
北原白秋(明治十八~昭和四十二年)は明治末から大正、昭和にかけて活躍した詩人です。
詩人といっても、和歌、童謡、民謡にいたるまで幅広い活躍をした多芸多才な人で、篠ノ井で「更級節」を作詩した当時には長谷寺にも立ち寄りました。
上の詩「薔薇二曲」には、誰もが「当たり前」と、つい見過ごしている出来事を前にして、ひとり立ち止まって自然の不思議、いのちの神秘を感じている深い眼差しがあります。
私たちは誰もが詩人のような感性を持つことは出来ません。
けれども、たとえば亡き大切な人の命日など、ふと私たちが生きていることの不思議が胸に迫るときもあります。
幾世代も連なったいのちが、そして多くの縁(えにし)のお陰さまに支えられるいのちが、今ここで「わたし」として花咲いていること。
当たり前、ではありませんね。
ありがたいことです。