住職日記

月がきれいな夜には

3月12日 晴れ  

 

月の光でしか見えない世界がある。

 

昔、何かの本の中で出会った言葉です。

とても印象に残り、以来、私は月を見上げる人になりました。


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お坊さんの修行に入り、真言宗の瞑想に「月輪観(がちりんかん)」という、月の瞑想があることを知り、それは素敵だな、と思いました。満月を想い、その満ち欠けを想い、闇を照らす性質や、その清浄な美しさを想い、その清らかで汚れなく、自在独立の姿に、悟りへの想い、菩提心を重ねてゆく瞑想です。

 

思えば、長谷寺のある信州さらしなは月の都、と言われてきました。

更級の月、姨捨の月は、西行、世阿弥、芭蕉、一茶という日本の詩歌や芸能の巨人たちが憧れた特別の場所でしたが、それは、万葉の昔から、この更級という土地が格別に月の美しい場所であるからにほかなりませんね。

 

今日は美しい満月でした。

少し雲がかかり、やわらかな光が美しくもあやしい月でした。

その光が照らす世界もまた、昼間の姿は違う姿となって、私たちの目に映ります。

 

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こころが静まってくるようでもあり、ざわめくようでもある、満月の夜。

暦においては、月と共に生きてきた歴史の方が、はるかに長い人類の歴史を思うと、瞑想とまではいかなくても、もっと月を見上げ、月の光でしか見えない世界を感じる時間を大切にしていきたいものですね。

 

合掌

(住職記)

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