住職日記

お盆の思い出

子供の頃、カブトムシ捕りが大好きでした。

好きすぎて、夏休みなどは仲良しと朝3時起きで山に行ったものです。早く行かないとライバルたちに先を越されてしまうので、いつもは自分で起床できない少年が、目覚まし時計で飛び起きて家を駆け出していきました。

星明りだけの暗い山道を怖気づくこともなく狙いの樹をめがけてかけ回わり、懐中電灯の明かりの中に、お目当てのカブトムシやノコギリクワガタの黒い光を見つけたときの胸の高鳴りは、今も懐かしく思い出されます。

そんな少年たちも、お盆になると虫捕りをやめました。年かさの子たちが教え諭すのです。

私は今でも覚えていますが、お盆のある日、年上の子と遊んでいる時、私は街灯の柱の下にクワガタを見つけました。喜んでそれを手に取ろうとすると、一緒にいたその子が言うのです。


「お盆の間は、虫を殺したり捕ったりしちゃだめなんだよ」と。


なぜだか分かりませんが、その言葉は非常に強い印象となって私の中に残りました。そう話してくれた子は、いつもだったら誰よりも早くカブトムシを見つけ捕まえてしまう少年でしたし、それどころか、これをお読みの皆さんの中にも記憶されている方は少なくないと思いますが、昔の少年たちの遊びは少々残酷で、その少年も虫やカエルやヘビなどの生き物の殺してしまうような遊びを、いつもなら平気でしてしまうようなタイプの子だったのです。

その子が、真剣な面持ちで「お盆は生き物を大切にするんだよ」というのですから、私は驚くと共に、何かとても厳粛な気持ちになったのです。

そこには、その子だけの考えではない、ずっと昔から守られてきた、大切な教えなのだという言葉の重みのようなものが子供ながらに感じられました。その言葉は、子供の世界での『言い伝え』のようなものだったのかもしれません。

このお便りがつく頃には、もうお盆は過ぎて秋の風が吹き始めていることでしょう。カブトムシは姿を消し、秋の虫が鳴き始めますが、虫の音に耳を澄まして、命についての思い出を振り返るのもいいかもしれませんね。

(明日香 岡本寺 ハガキ説法寄稿文より)

シェアする