弘法大師が伝えた密教の法
長谷寺では、弘法大師空海、お大師さまのお誕生1250年(令和5年)を祝い、報恩の行として、寺の本尊である十一面観音さまの供養の法「十一面法」の一千座の修行を発願し、昨年より続けております。
この「十一面法」は、古来疫病が流行する折に、盛んに修されてまいりました。長谷寺でも、新型コロナウィルスの鎮静化と除病延命、万民安穏を念じてお勤めしております。こうした真言密教のお勤めは、本尊を供養し、その大きな功徳を授かる法(本尊瑜伽の行法)として、弘法大師がお伝えになりました。
ハンパない、お大師さん、、、。
これらの実践的なテキスト(次第)は、伝統仏教の正しい教えに基づく理論的な裏づけがあり、弘法大師はそれらをいくつもの論書に著しています。
仏教は、どういう教えなのかと言えば、いろんな言い方があります。知恵を説くとか、慈悲を説くとか。宗派によっても、いろいろあります。が、お釈迦さまの本来に立てば、仏教というのは「仏になる教え」、成仏の道です。つまり、覚りの道ですね。
弘法大師は、この「覚り」について、密教の立場から、仏さまとはなんなのか、その境地はどんなものか、そして私たちがそこに至るにはどうすれば良いのかについて示しています。また、どうして至ることができないか、についても。
これらは、私たちの身体、言語、意識の観点(三密)から論じられ、それら三密が、私たちが生きるこの世界のあり方、その様相、また働きとどのような関係にあるかを示すとともに、それを単に知的に理解するのではなく、全人格的に体験していく道として明かされます。
…と、さらりと書きましたが、これって驚天動地のことを言っているのであり、お大師さんハンパないわけです。
空海に学ぶ仏教
さて、弘法大師には難解で専門的な実践の著作が多いのですが、リンク先の吉村均先生が取り上げでおられる著作は、弘法大師による仏教入門の書として大変素晴らしいものです。
もっとも用いられている言葉は古くてまた難解なので、まことにとっつきにくいのですが、吉村先生のまことにとっつきやすい解説によって、この本がお釈迦さま以来の伝統の仏教学に根ざしたものであり、仏教の世界観とか考え方を知る上で、大変な優れもの、有効な本であることが分かります。
実は、日本仏教にも総合的、体系的に学ぶシステムはありましたが、宗派の別が進み、特に近代化以降は宗派仏教として自宗の宗学を中心に学ぶことが当たり前になってしまいました。そのため、各宗派の祖師たちやが、ご自身の示した道の「前提」として当たり前のように学んでいた仏教の基本が見失われてしまいました。
弘法大師の「十住心」の教えは、その点を学ぶために大変に良くまとめられていて、仏教の全体像を理解するのにとても役立ちます。弘法大師は真言宗の方ですが、そうした宗派を超えて一読、必読の一冊です。
読むのは難しいから、ぜひ吉村先生のお話しをお聞きください。
南無大師遍照金剛