令和5年、6月18日、長谷寺にて、弘法大師ご誕生1250年を祝い、柴燈護摩が営まれました。
その時の様子をご覧ください。
この度の柴燈護摩法要にご参拝くださったみなさま、お手伝いしてくださったみなさま、ご縁の皆さますべて感謝申し上げます。
◆
山の祈り
先日、信州長谷観音では、弘法大師のご誕生1250年を祝い、記念法要として修験道の法要である柴燈(さいとう)護摩を営み、檀信徒の皆さまと報恩のお祈りをし、600人以上の方々が火渡りをしました。
柴燈護摩とは、お寺の境内や山野で行う護摩供養で、皆さんも山伏たちがもうもうと火をおこす盛大な法要をテレビなどでもご覧になったことがあると思います。
しかしなぜ弘法大師の誕生祝に柴燈護摩(火渡り)なのでしょう。
修験道は自然の中に神仏を感じ、「山」を本尊とし、その尊い山懐に深く入り込み、山の風光をお経とし、全身で読み唱えます。
そもそも山は水の源流であり、いのちの源であり、祖霊が宿る世界です。
太古から人々は畏怖と親愛を寄せてきました。
修行者は仏の山に身を置いて、風に吹かれ、滝打たれ、鳥の行方に心を放ち、四季に変化する樹々とともにそよぎ、岩肌にしがみついて果てしない時に身をゆだね、土くれの中におびただしい命を感じ、どう猛な獣たちと対峙し、次第に六根を清め、五感を磨き、自然の中すなわち仏に融け入っていきます。
山を包む闇や、その闇に浮かぶ月や、雲海に登る太陽の光の中に開かれる扉の奥へ奥へと尋ね入っていくのです。
この「山の道」は若き日の弘法大師も歩んだ道です。
日本古来の自然を畏れうやまう神道の世界観に導かれ、弘法大師はいのちや宇宙の神秘を尋ねたものと思います。
その探求の道で仏教に目覚め、仏の教えによってその神秘の扉を開いたのでしょう。
お大師さまにとって、仏法はいのちや宇宙の神秘の扉を開く「鍵」でした。仏法という鍵で世界の扉を開けば、たちまちに仏すなわち山は語り始め、森羅万象はひとつながりの輝きのうちに私たちを輝かせ、いのちの尊さに目覚めをもたらします。
お大師さまは、この山の祈りの道を歩んで、その頂きを目指し、その絶嶺に開かれた世界を見たのでしょう。
そんな修験道の心を通じて、多くの人に弘法大師の教えと出会っていただきたく、お大師さまの生誕1250年の記念法要として修験道の柴燈護摩を営み、大自然の力を肌身に感じる火渡りを修行したのです。
皆さまも仏法という鍵を手に、いのちや自然の不思議の扉を開いてみましょう。
南無大師遍照金剛