すっかり遅いご挨拶となりましたが、明けましておめでとうございます。
令和4年がどうぞ皆さまにとってよい1年となりますように、心からお祈り申し上げます。
今年は雪が多く、いちめん真っ白なお正月でしたが、おかげさまで1月18日に全てのお正月行事が無事終了いたしました。
誰も体調を崩さず、無事にお正月行事を終えることができ、ホッと安堵しながら、1か月ぶりにこの寺嫁日記を開いています。
皆さま、どんなお正月を過ごされたでしょうね。
そういえば、お寺のお正月ってどんなものなんだろう?
と、思いませんか?
私もお寺にお嫁に来るまでは、お寺のお正月がどんなものなのか、全く知りませんでした。
お寺便り「ポタラ」のお正月号にも書かせていただきましたが、なかなか見ることができない「お寺のお正月」を、寺嫁の目線から、ちょっとのぞいてみませんか?
お寺、とひと口に言っても、お正月の御祈祷をなさるお寺と、なさらないお寺があり、お正月の様子もずいぶん違うことと思います。お正月以外の時期が忙しい、というお寺さんもあります。長谷寺は御祈祷をさせていただいており、お正月は長谷寺の1年の中で最も忙しい時期になります。
準備は毎年9月、住職と2人で、本堂で全ての御守をひとつひとつ数えるところから始まります。開け放った本堂の窓から入ってくる風が、涼しくて心地よいと感じるような頃です。この日から、お正月準備がスタート!用意するものもたくさんありますし、年末の大掃除はできないので、秋から少しずつ各所の掃除や片付けも進めていきます。
9月には9月の日常があり、行事やご法事もあり、その上にお正月の準備が加わるわけですから、どうしてもしなくてはならないことが増えます。時には、本当にこれが全てできるの?と途方に暮れそうなこともあります。でも大丈夫。そんな時、私には魔法の言葉があるのです。それは、
「ともあれ、ひとつひとつ」。
頭でどんなにあれこれ考えても、こなせることは一度にひとつ。焦ってあちこち手を付けても、中途半端になって混乱やミスを招き、かえって仕事を増やしたりしがちです。
そんな時はいったん立ち止まり、ゆっくり深呼吸して、唱えましょう。
「ともあれ、ひとつひとつ」。
すると、波立った水が静まるように心がスーッと落ち着いてきます。
心が静まったら、頭の中にいっぱいになっているものを、全て書き出していきます。しなくては、と思っていることを、どんなささいなことでも全て紙に書き出して、目に見える形にしていくのです。ひとつ書き出すと、ひとつ頭の中のものが減り、ごちゃごちゃだった頭の中が整理されて、すっきりしてくるのが分かります。
私は、お正月用のするべきこと全体リストと、何日に何をしたかという記録を、毎年書きとめています。たとえば、「12月26日、もち米を洗って浸す。3時間ほどかかるので、夕方には終わるよう早めに始めること」など。
このリストを見ながら、焦らず、目の前のひとつひとつのことに、丁寧に着実に向き合っていきます。すると、ひとつ、またひとつ、気づいた時にはリストのほとんどがクリアされていくのです。どんな時も、ひとつずつ丁寧に向き合った方が、ちゃんと終わる。お寺暮らしで学んだことのひとつです。
「ともあれ、ひとつひとつ」の呪文。いつかお試しくださいね。
こうして年末、12月27日になると、10日間泊まり込みでお手伝いして下さる方たちが次々到着します。
布団も湯たんぽも準備万端。10数枚の作務衣は輪袈裟とセットにして並べます。廊下には、私に聞かなくてもひと目で分かるよう、薬や各種の文具、工具や軍手、カイロやのど飴、マスクや消毒液など必要なものがズラリと並べてあります。さあ、にぎやかな合宿所のお母さんのような日々が始まります。みんな自分のご飯ある⁉ これ誰の靴下⁉(みんな黒いので…)
12月27日から1月5日まで10日間の献立は、12月のはじめに全て決めておき、必要な材料も2枚の紙にびっしりリストアップしておきます。2枚に分けるのは、事前に買っておけるものと、直前に買うものとを分けて記入するため。事前に買っておくリストの紙には、文具や日用品、薬、雪用の長靴、お味噌やお醤油などの調味料、冷凍できる食材、などが書き込まれています。直前に買うものは、野菜や卵などの生鮮品。
大人数になる年末年始に大活躍するのが、いただいたお野菜です!
新聞紙にくるんで保存場所に大事に並べておき、ありがたく使わせていただいています。
翌28日は、毎年お餅つき(残念ながらコロナウィルスの感染予防のため、去年と一昨年は中止に)。いくつもの大鍋に洗って浸しておいた45キロの餅米を、半日がかりで、臼と杵でつきあげていきます。お餅をつく大きな音、立ちのぼる餅米の甘い香り、威勢のいい掛け声。ああ、いよいよお正月が来るのだなあと実感がわいてきます。新しい年が良い年になるように、私も形ばかりつかせてもらいますが、ペチン、ペチンとお餅を手でたたくような音がするばかり…。これを「お餅つき」とは言い難し。あえなく、お餅を丸める持ち場に戻ります。
つきあがったお餅は、観音堂に御供えする特大の鏡餅をはじめ、70個の鏡餅に丸めます。鏡餅ができたら、今度は、寒い中除夜の鐘をつきに来て下さる方たちのため、108組の紅白ののし餅を作ります。紅色の方は、桜の花のような上品なピンク色にできると嬉しい。あとののし餅は、お正月の昼食のお雑煮用。お正月中は、多い日で25人以上の方が、交代でお弁当とお雑煮の昼食をとりますが、寒い中、温かいモチモチのお雑煮がとても美味しいと、毎年喜ばれているのです。
さあ29日からは、泊まり以外の、通いでお正月行事を手伝って下さる方たちが、続々と来られます。いよいよお正月です!(その弐につづく)