故郷の夏には

8月になりましたね。
お寺から見る景色は、空も雲も山も、まさに夏!
空の青、雲の白、山々の深緑、田んぼの緑。
あざやかな夏の色です。

お寺から見る
夏景色

以前、住職から「こんな歌があるよ」と教えてもらった歌があります。

 
遠い国の客には笑われるけれど
押し合わなけりゃ街は 電車にも乗れない
まるで人のすべてが敵というように
肩を張り肘を張り 押しのけ合ってゆく

けれど年に2回 8月と1月
人ははにかんで道を譲る 
故郷からの帰り
束の間 人を信じたら
もう半年がんばれる

機械たちを相手に言葉は要らない
決まりきった身ぶりで街は流れてゆく
人は多くなるほど物に見えてくる
ころんだ人をよけて 交差点を渡る

  けれど年に2回 8月と1月
  人は振り向いて足をとめる
  故郷からの帰り
  束の間 人を信じたら
  もう半年がんばれる

中島みゆきさんの「帰省」。
8月になると、ふとこの歌を思い出します。

故郷の夏とお正月は、人をこんな優しい気持ちにさせてくれるのですね。

夏の故郷。
畑にはナスやキュウリやトウモロコシなどの夏野菜が実り、
山の上には真っ白な入道雲が高くそびえ、
降るようなセミの声につつまれる夏。
お寺では何百年も続くお施餓鬼やお盆の行事がおこなわれ、
迎え盆にはあちこちの家から提灯を持った人たちが出てきて、挨拶をかわす。
夕方には涼しい風が吹きはじめて竹林を揺らし、
ヒグラシが鈴のように鳴く。

お盆には、昔からその土地に伝わってきたやり方でご先祖を迎え、
遠く離れて暮らす家族を迎え、
土地ごとに決まったお盆の料理や、
それぞれの人の好きなものを作る。

そこにあるのは、人を想う気持ちと、感謝と祈りです。
自然の実りへの感謝
今自分が生きている感謝
亡き人への祈り
再会できた喜び
また無事に会えるようにとの祈り
何かに守られている感謝

そして、「変わらないものがある」という安心感。
故郷の夏には、そういうものがあり、
それが人を優しい気持ちにするのかもしれませんね。

故郷の夏が、「もう半年がんばれる」と思えるほど、どこかで誰かに力を与えてくれるのなら、私はここで、故郷の夏の感謝と祈りの行事を大切に守っていこう。
そっと心に念じる、夏のお寺暮らしです。

「みんなが
幸せでありますように」
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